01.漢字の成り立ち編
部首と構造
深い淵に潜む習性を表す漢字の由来
「鱏」の右側は「覃」という文字で、「深い」という意味がある。深い淵に潜んでいる魚ということから、日本ではエイを指すようになったといわれている。
音・訓・語感
体の形や尾の特徴から生まれた名前
エイの語源には、片側だけになった魚を表す「片辺辺(かたへい)」や、尾が長いことを「燕尾(えび)」ということからきているという説など、諸説が存在する。
象徴性
魔除けと幸運を運ぶ「神の目」を持つエイ革
エイ革は「魔除け」などの意味があり、武士に好まれた。中心の白い斑点は「神の目」と考えられ、海外でも「ラッキーフィッシュ」と呼び重宝されている。
02.料理歳時記編
旬と二十四節季
夏のアカエイと冬に締まるカスベ
アカエイの旬は身が肥える夏(6月~8月頃)で、二十四節季の「芒種」から「処暑」の頃。北のカスベは身が締まる冬(12月~1月)が旬とされている。
年中行事・人生儀礼
内陸のハレの日を彩る煮こごりとカスベ
奈良県では「エイの煮こごり」が結婚式や秋祭りなどハレの日の定番料理である。秋田県でも干しカスベの煮物が、正月やお盆などのお祝いごとでよく食べられている。
季節名や異称
夏の季語でもある赤えいの柔らかな肉質
産卵期である6~8月ごろは肉質が柔らかくなり美味しく、夏の風物詩として親しまれてきた。そのため、俳句の世界などでは「赤えい」は夏の季語になっている。
03.海食十法・郷土料理編
海食十法の該当技法
軟骨の歯ごたえとゼラチン質を生かす
エイは肉、ひれ、骨のすべてが食用になる。軟骨特有の歯ごたえや、ゼラチン質の煮こごりの食感は日本人の嗜好に合い、熱を通しても硬く締まらないのが特徴である。
郷土料理・漁師料理の代表例
余すところなく食する冬のカスベ煮
北海道では冬が旬のメガネカスベを使った煮付けが頻繁に食される。骨が柔らかいため余すところなく全て食べることができ、コラーゲン豊富な美容食としても注目されている。
技法と文化
アンモニアの特性を活用し内陸の保存食に
死後に尿素がアンモニアに変化して細菌繁殖を抑えるため、比較的長期保存に耐えうる。この特性により、乾燥加工して海から遠い内陸部や山間部でも重宝されてきた。
04.環境変化編
海洋環境と分布変動
有明海を脅かすナルトビエイの異常繁殖
温暖化により越冬が可能になり分布域が拡大している。特にナルトビエイは有明海などで大量繁殖し、アサリやカキを捕食して養殖業に壊滅的な被害を与えている。
食べ方・消費スタイルの変化
コラーゲン豊富で食感を楽しむ次世代食材へ
独特の食感とコラーゲンを持つ食材として再度注目されている。かつてはエイヒレ等の酒の肴が中心だったが、現在は未利用魚としての有効活用が各地で模索されている。
養殖やブランド魚の登場
錦江湾で進む「海のジビエ」ブランディング
商業養殖はないが、鹿児島県錦江湾では厄介者だったナルトビエイを「海のジビエ」としてブランディング。臭みを除去する加工技術を開発し、地域食材として再定義している。